実証実験の紹介

 2011年8月の設備完成以来、通年の建物の環境特性および機器の運転特定の測定分析を行うとともに、定置式蓄電池、見える化HEMS、開閉式膜天井などの実験設備の追加、HEMS開発のためのプラットフォームのECHONET*(1)からECHONET Lite*(2)への移行、HEMSの入力情報の整備などを行いました。
*(1) ECHONET : 電灯線や無線を利用して家電機器の制御を行うための家庭内ネットワーク規格。1999年策定。
*(2) ECHONET Lite : ITの普及に伴い、ECHONET規格を使いやすく軽量化した上で、新たに太陽光発電システムや蓄電池なども通信できるようにしたもの。2011年策定。スマートハウスの普及を促進するために、経済産業省が国内HEMS標準プロトコルとして認定している。
 これらの成果から、省エネルギーを実現し、全体のエネルギーシステムと協調しつつ、創るエネルギーと使うエネルギーの需給バランスを確保する快適でサステナブルな2020年のスマートハウスへ、数歩近づけたと考えます。
 COMMAハウスの特徴的な実験・整備内容について紹介します。

1. エネルギーマネジメントの構築

1) プラットフォームと環境情報取り込み 

 住宅におけるおけるエネルギーマジメントを構成するサーバ、エアコン、電動窓、電力計測ユニットのECHONET Lite 化を実施しました。
 エネルギーマネジメントサーバについて、でんき予報*(3)、天気の実況・予報、太陽光発電、太陽集熱の予測、温湿度など宅内環境、水周り情報などを連携して機器を制御するための入力機能を整備しました。
 また、壁表面湿度を埋め込みセンサで測定し、部屋温度を推定する手法を検証・評価し、HEMSへの取り込みを行いました。
*(3) でんき予報 : 日々の電気の使用状況やそれに応える電力会社の供給力の実情について、東京電力がホームページより提供している。 http://www.tepco.co.jp/forecast/

2) マネジメント機能の実現

 初期段階の取り組みとして、以下の機能を開発しました。

住環境情報連携 − 窓・エアコン制御:

 室内温度や外気温度、風速や風向、天気予報の情報を取り込み、窓の開閉やエアコンのON/OFFを連動して制御する機能を構築しました。室内温度と外気温度によって窓の開放とエアコンの利用を切り替え、また、効果的に風を取り込むために、風速や風向によって開放する窓を自動的に選択します。天気予報が雨の場合には、窓は自動的に閉まります。  
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電力需給協調 − 蓄電池制御:

 蓄電池システムと太陽光発電システムを組み合わせ、電力需給情報を反映した「でんき予報(東京電力提供)」と連動した節電マネジメントシステムを構築し、その動作を検証しました。通常時は、居住者が満足できる、また、需給逼迫時は社会がうまく機能するシステムを目指しました。  

見える化効果の強化:

 クラウド型のエネルギーマネジメントシステムを導入し、テレビ、タブレット端末で情報を閲覧できるようにしました。  


2. エネルギーマネジメントに貢献する建物特性把握のための実験

1) 新しい環境部材*(4) による通風・採風実験  

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 COMMAハウスの特徴は、通風機能の充実です。建物の南面をダブルスキン*(5)とし、外付けの可動ルーバーや、地窓・ハイサイド窓を含め68の窓を配置しています。
 実証実験では、建物の基本的な通風機能を確認することを目的として、電動サッシによるウィンドキャッチャー効果を検証し、その効果が得られない場合に比べておよそ10倍の換気量を得られることを確認しました。
*(4) 新しい環境部材 : 実験用に試作した外付け可動ルーバー、通風室内建具。
*(5) ダブルスキン : 二重の外壁とその間の緩衝空間によって、主に夏場の環境制御(日射遮蔽、通風)と室内からの眺望コントロールを行う手法。深い軒・庇に、広縁を設けた和風建築の特徴でもあります。

2) 地窓、高窓の効果  

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 COMMAハウスは、屋外が静穏である場合でも、地窓、高窓を組み合わせた温度差換気によって、外の涼しい空気を室内に取り込むことができます。これを検証するため、空気の流れを可視化する風船を用いた実験を行いました。換気開始後、LDKにあった風船は上昇気流に乗って徐々にロフトに上がり、高窓まで到達したことから、温度差換気によって外の涼しい空気が地窓から入り、室内の熱が高窓から排出されることが確認できました。

3) 住宅・エアコンモデルとプレクーリング  

 COMMAハウスの建物とエアコンについて消費電力と快適性の関係をモデル化しました。さらにこの結果を用いて、需要シフトの手法であるプレヒーティング、プレクーリングの効果を、快適性やピーク削減効果などから評価しました。

4) 開閉式膜天井  

 COMMAハウスのリビングにおける吹き抜け部は、夏季は通風や開放感の点で長所となりますが、冬季は暖房の効果が落ちます。これに対して、1階と2階を仕切る開閉式の膜天井を新たに設置して、暖房効率の改善効果が得られることを確認しました。

3. 個別設備の機能追加・評価

1) 水回り  

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 超節水トイレ(洗浄水4L)、センサで出止水するキッチン用水栓、センサの電力を水の流れでまかなう自動水栓に加え、風呂などの湯水使用量の測定機器および見える化端末を設置し、動作を検証しました。

2) 住宅用蓄電池システム  

 市販されている蓄電池システムを導入し、ECHONET Liteで制御を行うゲートウェイを開発することにより、HEMSに対して状態を通知し、HEMSから動作を指示できるようにしました。また、太陽光発電システムの発電量と宅内需要に対する連携運転を実施し、設計通りの動作を確認しました。

3) 給湯システム  

 太陽熱集熱器と組み合わせた給湯システムの運用データを解析し、モデル化を進めています。
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